[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」

テンポとカードアドヴァンテージ

原文
Tempo And Card Advantage
著者
Eric "Danger" Taylor, also known as EDT
訳者
杉井光 ◆h92HIkARU.
投稿日
2003-10-29
更新
2003-10-29

僕はテンポの概念というものについての記事をユーズネットに何度か投稿したことがある。それについて、もう少し学術ぶったことを書いてみるつもりだ。今回、なぜそうすることに思い至ったのかというと、ミラージュやヴィジョンズやウェザーライトのカードが間違った使われ方をしているところを何度も見たことがあるからなんだ。中でも、Memory Lapse、Power Sink、Man o' War、Ancestral Knowledgeといったカードが間違った使われ方をしているのは、主にこの「テンポ」というものへの理解不足からだと思う。

さて、まずはM:tGのゲーム・メカニズムを見てみよう。基本的な制限というのは以下のふたつだけだ。

  1. 1ターンに1枚しかカードを引けない。
  2. 1ターンに1枚しか土地をプレイできない。

このふたつの制限にはお互いに微妙な関連性がある。

1)は、M:tG理論のゴッドファーザーBrian Weissmanによって詳細に論じられてきたので、トーナメントプレイヤーならだれもが、「カードアドヴァンテージがなぜ有用なのか、どのように有効に働くのか」を理解していると思う。間接的なカードアドヴァンテージであっても、それに目をつけて理解するのはけっこう簡単だ。たとえば、Wrath of Godで3対のクリーチャーを殺したとしよう。この場合、Ancestral Recallがもたらすに等しいカードアドヴァンテージを得たことになる。つまり1枚が3枚だ。

しかし2)は、マナとタイミングとデッキ中の個々の呪文のコストとの複雑な相互作用のせいで、より難解だ。「時間」は、だいたいにおいてマナと同義だと言える。たとえば場にマナソースが少なく、手札には大量のクリーチャーを抱えていた場合、1体クリーチャーをプレイするのに1ターンかかることになり(各ターンのドローはここでは考えないものとする)、かなり時間がかかる。逆に、手札を全部使い切れるだけの豊富なマナソースがある場合には、1ターンしかかからない――つまりクリーチャーをたくさんプレイするためには、「時間」を費やすか、大量のマナを費やすか、だ。Savannah LionやKird Apeといった能率的なクリーチャーを使えば、マナ効率のいいデッキを組める。これはテンポアドヴァンテージを得ることによって勝利につなげようという考え方だ。

カードアドヴァンテージとテンポアドヴァンテージを可能な限り稼ぐのが理想とは言え、大部分のデッキはどちらか一方に偏る傾向がある。テンポアドヴァンテージの確立を目指す(Stasisデッキや、クリーチャーウィニー)か、カードアドヴァンテージか(カウンターポストなど)だ。ごく限られたデッキだけが、この両方を確立できる(かつての"黒い夏"の古典的なネクロのように)。

カウンターを大量に入れたコントロールデッキのほとんどは、カードアドヴァンテージで勝つタイプだ。コントロールデッキを使っているときは、相手がクリーチャーの大群を呼び出すのも許してかまわない。ライオンでも猿でも好きなだけ出させて、攻撃を喰らったら薬でも飲めばいい。最終的にはWrath of Godで莫大なカードアドヴァンテージを稼ぎ、さらにカードを引きまくって勝つ。逆に、速攻デッキがStrip Mineなんかでこちらの時間を奪ってきたら、テンポアドヴァンテージの差でこっちが負ける。カードアドヴァンテージとカウンターで勝つには時間がかかるから、いちどきに自分の呪文を全部プレイできるかどうかはあまり気にしなくていい。コントロールデッキには、テンポ型のデッキの原理からはかけ離れた重い呪文も入っている。だから、カードとテンポの両方のアドヴァンテージを得て勝つデッキを作るのは難しいんだ。

ミラージュブロックは特殊な環境だ。ほとんどのデッキが、土地が多からず少なからずといったドローの良し悪しに左右される。また、バーンデッキがやたらと速く回るということもあって、ほとんどのデッキは、遅いカードアドヴァンテージ型のコントロール方式よりも、テンポアドヴァンテージによって勝つように作られている。

たとえば、Memory LapseとPower Sinkを見てもらいたい。すぐにわかると思うけれど、Memory Lapseは主にテンポアドヴァンテージを保つ手段として使いやすく、Power Sinkはどちらかと言えばカードアドヴァンテージ向きだろう。Power Sinkは有効に使うためにはたくさんマナが要るから、クリーチャーを並べて殴っているような暇はない。Memory Lapseは、相手が重い呪文をプレイしたときに使って、かなりのテンポを稼げる。

長期戦向きにデザインされたデッキなら、Power Sinkの方がいい。Memory Lapseなんて使っていたら、また同じ呪文を引かれるわけだから、こっちもまた別の対抗手段をドローしてこなきゃならない(3回に1回は土地だし)。相手のライブラリに有効なカードが少し増えてしまうという結果にしかならない。逆に短いスパンで見れば、Memory Lapseは途方もないテンポアドヴァンテージをもたらしてくれる。

この理屈をうまく説明してくれるミラージュブロック構築のデッキをふたつ紹介しよう。ひとつめは、Tom GuevinがシカゴPTQで使ったデッキだ。

Creatures (20):
Spells (17):
Land (23):
Sideboard (15):

ふたつめはHammerの、やはりシカゴPTQのデッキ(すまないがうろ憶えだ)。

Creatures (12):
Blue Spells (12):
White Spells (10):
Mana And Land (26):

さて、まず最初に、このふたつのデッキの特色から。表面的に見れば、両方ともシンプルなカウンター型のコントロールデッキだと思うだろう。でも、実はこのふたつは、まったく違う目的とプレイスタイルを持ったデッキなんだ。

Tomのクリーチャーを見てみよう。ごついアタッカーが大量に入っている。Cloud Elementalなんて、防御を省みない専用アタッカーだ。一方Hammerのデッキには、もっと遅くて死ににくいクリーチャーが入っている。

Tomのデッキは速攻だ。テンポをベースにして考えられている。相手が対抗手段のために充分な時間(もしくはマナ、ほとんどじ意味だ)を稼ぐ前に、素早く殴り倒す。カウンターは、ダメージを与えるという目標を補強するために入れてある。防御用じゃない。

逆にHammerのデッキは、それほど速い段階では相手に攻撃できない。自分自身を脅威から守り、Sacred Mesaのようなカードアドヴァンテージ・エンジン1枚によって勝てる中盤から終盤まで生き残る。Gerrard's Wisdomも、場合によってはカードアドヴァンテージ・エンジンとなりうる(主にバーンデッキに対して、1枚のGerrard's Wisdomが複数の火力呪文に相当することになる)。

そんなわけで、ふたつのデッキのカウンターの選択はまったくちがう。TomはMemory Lapseを使っている。こんなシチュエーションを想定しているだろう。自分のマナを計算し、相手のライフを考慮し、『あと二回殴れば勝てる』。こういうテンポアドヴァンテージを生み出す目的だけを主眼に置けば、Memory Lapseに勝る呪文はない。Hammerのデッキでは逆に、カードアドヴァンテージのためにテンポを切り捨てている。だからMemory Lapseを入れるのは自殺行為にしかならない。たとえばMemory Lapseで相手のNecrosavantをもう一度キャストし直させ、5マナを浪費させたからといって、なんになる? デッキの遅さ、カードアドヴァンテージなどの理由から、こういうケースではPower Sinkを使わなくちゃいけないんだ。

また、Tomのデッキで特にわかりやすいので、テンポがどんなふうにカードアドヴァンテージに還元されるのかも説明しておこう。Memory Lapseを使った後、Foreshadowによってカードアドヴァンテージを得るという選択が生まれる。しかし、このコンボは合計で4マナかかるから、場合によってはそんなことをするより、さらにもう一匹デカブツを呼んでさっさと相手を殴り倒すことができるかもしれない。これはつまりテンポのためにカードアドヴァンテージを諦める例だ(ForeshadowとMemory Lapseのコンボは美味しいので、まあめったにそんなことはしないけれど)。

このふたつのデッキでは、Man o' Warの使い方も違う。Tomのデッキでは、Man o' Warを引いてきたらたいていすぐに召喚して、すでに場に出しているクリーチャーのことはあまり考えずに殴りに行く。逆にHammerのデッキなら、Man o' Warを抱えてじっと待つ場合もある。Desertionとのコンボのために、8マナ揃うまでじっと待つことだってあるだろう。また、FloodgateをMan o' Warで戻したときに相手のクリーチャーが確実に全滅するように、島が充分並ぶまで待つ場合もある。カードアドヴァンテージを生み出すために、貴重な時間と交換するわけだ。

最後に書いておきたいのは、Ancestral Knowledgeについてだ。

まず、純粋なカードパワーとしては、このカードはImpulseに比べてかなり弱い。何度もこのカードを使ってテストしてみたけれど、どうやっても弱かった。弱い理由を分析する方法はいくつかあるけれど、さしあたっては、これまでやってきたテンポとカードアドヴァンテージについての分析を続けてみようと思う。

Ancestral Knowledgeの第一の問題点は、カードアドヴァンテージを失うことだ。このカードをプレイしても、ほしいカードを引いてくるのは後のターンになってからだ。ほしいカードが1枚なら、これは2マナかかって10枚しか掘れないVampiric Tutorくらいの働きしかしない。カード効率に反するから、カードアドヴァンテージを勝ちにつなげるようなデッキでは使えないんだ。次に、このカードは累加アップキープによってマナを拘束する。このコストのせいで、速いテンポデッキで使ったとしても、マナ供給が止まるのでイニシアティヴを取れない。カードアドヴァンテージを失うからコントロールデッキでも効率悪いし、マナを喰うから速攻デッキで使うのも危険だってことだ。

でも、ひとつだけAncestral Knowledgeを活用できるデッキタイプがある。sands-a-poiseのようなトリックデッキだ。この手のデッキには相性がいいと思う――Vampiric TutorやEnlightened Tutorの方が単純に使いやすいとか言わなければ。まあ、いつかTutorシリーズがフォーマット落ちしたら、Ancestral Knowledgeがこういったトリックデッキに使われる日も来るかもしれない。

Ancestral Knowledgeのデッキ圧縮効果についても考慮しなきゃいけないだろう。でも、このデッキ圧縮効果もよく過大評価されるんだ。Land Taxと比べてみよう。Land Taxの強さについては色んな記事に書いてあるし、だいたいはそのデッキ圧縮効果を強調している。でも、圧縮はLand Taxの真価じゃない。Land Taxは、ごく単純に、手札が増えるんだ。土地は呪文と同じようにリソースだし、圧縮効果を強調するというのは、カードアドヴァンテージ・エンジンであるというポイントからズレている。実際にLand Taxでアドヴァンテージを得る方法は比較的簡単だ。いちばんメジャーなやりかたとしては、Armageddonを使うというのがある。デッキ圧縮なんて問題にならない。Armageddon後のLand Taxの真の恐ろしさは、追加のカードが引けて、土地が並べられることだ。土地であっても、カードアドヴァンテージであることにはかわりない。カードを引ければアドヴァンテージが生まれるし、土地を簡単に価値の高いカードに変換する手段(たとえばBrainstorm)もある。それも、やはりカードを引けるというLand Taxのカードパワーのおかげなんだ。

Land Taxのパワーがデッキ圧縮だけだというなら、Ancestral Knowledgeもやっぱりいいカード、ということになるのかもしれないけれど、そんなことはないからね。

古い記事なので、こんにちでは常識になっていることばかり書かれている印象があります。僕はこの頃からやってたから、出てくるカードも全部わかったけど、最近始めた人が読むと、そもそもデッキレシピのカードもわからないかも。

なお、この頃はそもそも「テンポ」という用語が存在していません。原文ではすべて"time"という表現であるところを、わかりやすさを優先して「テンポ」と訳しました。

当ページは、2ちゃんねる卓上ゲーム板「MTG Sideboard Online 日本語版」スレッドに投稿された記事を、426(braingeyser-lj@infoseek.jp)がまとめたものです。