- 原文
- Magic Invitational Report: David Price
- 著者
- David Price
- 訳者
- 杉井光
- 投稿日
- 2003-01-09
- 更新
- 2003-06-23
招待選手たち16人が、クアラルンプールやらマレーシアやら南アフリカといったエキゾチックな舞台を飛び回っていたのは、もうすいぶん昔の話だ。
夜の街のめくるめく体験――マレーシアの街路は海賊版映画やパチもん時計を売る露店でごった返していたし、南アフリカでは、どう考えてもサメしかいねえだろっていう外洋への遠乗りに連れて行かれたし――でも、今年はそんなものもなく。僕ら招待選手がやってきたのは、ワシントン州シアトルだった。
勘違いしないでくれよ、僕は他の奴らとおんなじくらいシアトルが好きだ。ただ、新しい場所に行けないのが残念なだけだよ。
知っての通り、雨の日のシドニーのバスはアレなんだが、この日のシアトルはそれ以上だった。16人の選手はシアトルの埠頭地区で降ろされた。つまり僕も降りた。近くで待っている奴はトマス=パネルだけだった。たぶん彼だけが手すきだったんだろう。
僕らはワース=ウォルパートに連絡して、そのへんぶらつかないかと誘ってみたが、断られた。会議か何かがあるらしかった。アーロン=フォーサイスを誘ってみたけど、なんか職場で大変なことがあるらしくてやっぱり断られた。
まあ、たとえほっとかれても、僕らM:tGのプレイヤーは街を遊び尽くすやり方を知っている。ナイスなランチの後で、僕らのうち何人かは海岸通りのアイリッシュ・パブに行った。夕飯まで5時間もあるってのに、他にどうやって時間を潰せと?
ブライアン=キブラー、デイヴィッド=ハンフリーズ、ジョン=フィンケル、それから僕の四人は、ギネス・ビールやらウォッカやらレッド・ブル(訳注※あっちではわりと有名なスタミナドリンクらしい)やらをやった。しこたま呑んだ後で、僕らは洒落たレストランに行き、WotCの奢りで夕飯を食った。
午後2時からすでにして飲み始めていた僕らだが、まあ次の日のトーナメントに備えて睡眠をとっていたつもりとでも思っていてくれ。いやはや。
僕らはエイヴィンド=ニッター――もしくは単に”ロックスター”――に、異性、あるいは同性(まあ、君が”そっち”なら)に対してすら適用できる新しい評価システムを教えてやろうとした。この手の「評価システム」ってのは性差別だ、うんざりする、って人もいるだろう。あんたらは正しいかもしれんけど、まあ決めつける前に、広ーい心でもって、このシステムについて聞いてくれよ。
知っての通り(いや、知らないか?)、従来の評価システムはまあ、たいがいが1点から10点の段階だったんだが、これだと「あの女は15点」とか「あの女はマイナス1点」とかいう、システムの完全性をおびやかすような法外な点数づけがよくされてしまうんだ。
僕はもっとぐっとシンプルなシステムが好みだな。これはジョン=フィンケルに教えてもらったんだけど。
人間は、1か、0。二進数。これ最強。
もう少し丁寧に言うと、こんな感じにはっきりしてしまう。
1は、魅力的なやつ。
0は、魅力的じゃないやつ。
少なくとも僕に関する限り、これだけが正しいモノサシだ。で、これはまた、そいつがどれくらい酔っぱらっているか、あるいはどれくらい落ち着いているか見抜くのにも役に立ったりする。
たとえば、こんな会話があった。↓
エイヴィンドの信じられないようなえり好みで何度か僕は挫折しそうになった。大して呑みもしないし、教えてやったシステムを取り入れようともしないし。奴は本当に気に入った女にしか手を出さない、ていうか要するにアホみたいに理想の高い"ロックスター"だってこと。
で、ついに僕は、卒倒しそうなくらい超ゴージャスな二人組の美女がバーの方に歩いていくのを見つけて、エイヴィンドに訊いてみた。
「あれはどうよ?」
エイヴィンドはうなだれて、
「オレも無敵じゃない。ありゃあ1だよ」
僕らがイイカンジに酔っぱらって、女に関する統一見解も出せなくなった頃、スコット=ララビーが帰っちまった。彼がアイリッシュ・パブで僕らと一緒になったことは話したっけ? なにかあったとき責任とれそうな唯一のやつが帰っちまったんで、僕らも大学地区までタクシーで帰ることにした。このへんの武勇伝を巧く伝えられたらと思うのだけれど、実は、ブライアン=キブラーがダンス・フロアで暴れてたことくらいしか憶えていないんだ。僕の身体も人間としてほとんど機能してなかったしね。
(訳注※M:tGのことがここまでまったく出てきてないYO!)
試合について詳しく語るつもりはないよ。M:tGオンラインで全部見られただろうしね。
ひとつはっきりと言っておくと、確かに僕はジョン=フィンケルとやりあったさ。ゴブリン・デッキであいつの顔をぶっとばしてやるべきだったね、やらなかったけどさ。まあ、済んだことだけど。
シアトルは退屈なところだけど、M:tGオンラインは白熱したね。他の国でなら、観客も10人か20人くらいだけど(まあ実際どれくらいの人がウェブサイトにアップデートされたのを読んだのかは知らないけど)すげえ人数がオンラインでリプレイを観戦していてビビッたね。なんつうスリル! みんなお気に入りの選手を応援したり、対戦カードについて喋ったりね。あのエネルギーは絶対、伝染性だったよ。
僕はガンスリンガーもやったんだけど、あんなにたくさん対戦したのは生まれてはじめてだった。僕のデッキは赤黒のMagnivoreファンデッキだったんだけど、このデッキがかなりイイことがわかったよ。11/11の速攻野郎で攻撃する楽しみも憶えたし。こんなに楽しいだなんてだれも予想してなかったろ?
でもまあ、その時は来てしまった。僕がほとんど知らない環境、オンスロート入りのスタンダード。その時の僕の成績は6−6。カード化の権利を争う決勝への望みは、全然なかった。
僕はそれまで青緑マッドネスとかサイカトグとかをプレイしてたんだけど、インヴィテーショナルっていう舞台には、そういう旧スタンダードでやり尽くされたような退屈なデッキはふさわしくないと思ったんだ。
で、僕はゴブリンデッキにした。当初から、僕はGoblin Piledriver/ゴブリンの群衆追いにメロメロだったんだ。彼はPsycatog/サイカトグをぶっこぬけるし、他のゴブリン、特にRaging Goblin/怒り狂うゴブリンとかReckless Charge/無謀なる突進とかの助力でどんどんグレイトになるしね。ほっとかれるとそりゃもうエロいくらい大量のダメージを稼ぎ出してくれるんだ。
だから、やってやったさ。
そのゴブリンデッキで、0−3。
とは言え、前述の通り、僕はジョン=フィンケルをぶっとばしてやるべきだったね。もう一度やり直せるとしたら、ゴブリンデッキは使わないけど。でも僕はそのデッキが、他のやつらのプレイしていたような退屈なくそったれ(まあ例外も少しはいるけど)に打ち勝てると確信しているよ。
結局、僕は6−9でトーナメントを終えた。次のインヴィテーショナル参加権を勝ち取ることはできなかった。
夜は浮かれてバカ騒ぎをし、他の選手たちとM:tGをしたり、そうでなけりゃ、(どちらかと言えば、だけど)静かな夜を過ごした。トーナメントの参加者はみんなイイ奴ばっかりだったよ、僕だって死ぬほど楽しめたからね。彼らと過ごせて良かったと思う。クリス=ピキュラ、ジョン=フィンケル――一緒にいるといつも楽しい僕のマブダチ二人――はもちろん、トミィ=ワラミーズやエイヴィンド=ニッターもイイ奴だった。この二人は僕のお気に入りのプロツアー・プレイヤーになるだろうね。昔からのお気に入り、デイヴィッド=ハンフリーズみたいに。
週末のしめくくりは、マーク=ローズウォーター宅の豪華なディナーだった。M:tGやプロツアーを支えているWotCの関係者たちと一緒に、大いに楽しんだよ。
僕は、これが自分にとって最後のインヴィテーショナルなんじゃないかと思った。ただ旅行を楽しんできただけじゃないかとも思った。七年間プロとしてM:tGをやってきたけれど、今、一発かましてやりたいと思う気持ちと同じくらいに、このままへこんでしまいそうな気持ちもある。
僕は、行こうと思えば、たぶんプロツアー・シカゴ(オンスロートのロチェスタードラフト)に参加する資格がある。そこで、結局はヴェニスへの資格も取ってしまうんだろう。
でも、僕にはもう気力がないんだ。
新しいプレイヤーたちはみんな、僕よりずっと熱意を持っているだろうしね。彼らはM:tGを食べ、呑み、呼吸している。僕にとってはもはやM:tGはスナックなんだ。味はいいけれど、おそらく僕にとっては大して栄養にならないもの。
ずいぶん早い段階――1998年にプロツアー・ロスアンジェルスを勝った直後――から、僕は生活のためにM:tGができるだろうと考えていたんだ。四年という歳月、それからいくらかの支出の後で、僕はようやくそれが間違いだと気づいた。
僕は長い間、プロのM:tGから離れられなかった――このゲームがなにより好きだったし、プロプレイヤーたちとの仲間意識もあったし、あと結局は、プロとしてのM:tGを「しない」自分を思い出せなかったからなんだ。
友人たちはみんなこのゲームから離れていこうとしてる、クリス=ピキュラとか。もうとっくにやめちゃった奴もいる。最近僕もようやく、自分がM:tGをやっていないとき、べつにそれをやりたくないときに、なにをして時間を過ごせばいいのかを思い出したんだ。
これがお別れになるのかそうでないかは僕にもわからないけれど、まあどちらにしろ大した違いはないよね。僕に投票してくれたみんなに、心からありがとうって言いたい。みんなをがっかりさせたんじゃなければいいけれど。
それから、僕ら――つまり、僕みたいな古いプレイヤー――のことを観戦してくれて、応援してくれたみんなに。
ありがとう。
当ページは、2ちゃんねるの卓上ゲーム板「MTG Sideboard Online 日本語版」スレッドに投稿された記事を、426(braingeyser-lj@infoseek.jp)がまとめたものです。