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この仕事をすること、愛すること――さらなるR&Dギャングたちの物語

原文
Take This Job and Love It
著者
Mark Rosewater
訳者
タイ屋
投稿日
2002-11-15
更新
2003-06-29

576 名前: タイ屋 投稿日: 02/11/15 12:01 ID:???

というわけで、予告していた「マローが次回予告で言ってるR&Dのうちわ話」です。最初に補足説明を。

ブラウニー(Brownie)
アメリカで発達したクッキーの一種。ボストンのクルミ入りブラウニーが有名です。
ディベロッパー(developer):
開発チームメンバー、ぐらいに思っておけばいいと思います。本当はデザインとディベロップは割と違うのですが、長くなるので省きます。

およそ6カ月前に、私は「R&D R&R」(開発チーム、休養と気晴らし)というタイトルのコラムを書いて、R&Dの面々が暇なときに何をしているかについてお話ししました。記事に対する反応は本当に良いものでした。そこで、私は今年のもう少し後の時期にもう1つの「R&Dの内幕」記事を書こうと計画しました。今がその「もう少し後の時期」だというわけで、私は再びカーテンを開いて、ウィザーズ社でどんな類の悪ふざけが行われているかということの実態を明らかにしようと思っています。

今日のコラムは、つまり舞台裏の物語のコレクションです。これらの物語のいつかはマジックに関係してますし、そうでないものもあります。ですが、わたしはそれらがみな、あなたにあなたの大好きなゲームを作っている男女(guys and gals)に対する、よりよい認識をもたらすと思っています。

遂行される使命。

私が最初に参加したとき、マジックのR&Dチームは5人の人間から成り立ってました。:私自身、ビル・ロウズ(Bill Rose:現在のR&Dの長)、マイク・エリオット(Mike Elliott)、ウィリアム・ジョックシュ(William Jockusch)、ジョエル・ミック(Joel Mick)。R&Dには他の人もいましたが、われわれ5人はマジックに専念していました。(R&Dは、現在とは少し違ったやり方で動いてました。しかし、その当時はそのやり方でいってました)ジョエルが責任者でした。私たちの残りは(みんな)デベロッパーでした。現在では、それぞれのセットに固有のディベロッパーの集団が割り振られています。しかし当時はそれとは違っていて、私たち全員が、どの開発チームにもいました。

私たちが、それぞれに特定の役割を果たすようになるまで長くはかかりませんでした。私はパワー・ゲーマーでした。私はなんでも、前にそうだったよりはより「いいもの」にしようとしていたディベロッパーでした。

より良く、より強く、より速く。(Better, stronger, faster)

おっと、すみません、昔のテレビがフラッシュバックしてしまいました。(※たぶん、TVドラマの「600万ドルの男」ネタだと思う)とにかく、私は開発チームメンバーで、常にセットのパワーレベルを上げようとしていました。ウィリアムは常に私に反対して、セットのパワーレベルを必死になって抑え込んでいました。チームが堅実なパワー・レベルを維持しつづけることの重要性(私が後になって学ぶ教訓)を理解していたので、普通は私はウィリアムに押し切られて負けていました。

けれども、誰にでもチャンスは回ってくるものです。私にそれが来たのは、ビジョンズを作っていたときでした。このセットは広範囲にわたるプレイテストの結果として、構築戦用のカードが少し不足していることが判明したのです。ある日、開発チームはジョエルのオフィスに呼び出されました。ジョエルはチームの面々を座らせて、そして私たちに彼がセットのパワー・レベルのことが心配だと言ったのです。

時間がなくなっていたので、ジョエルは私たちに、自分に計画があると言ったのです。「ここで私が、君たちにやってほしいと思っていることは」とジョエルは言いました。「1時間会議室に入ること。そして、ウィリアムに猿ぐつわをして、マークの言い分を聞くことだ」そして、私たちはそうしました。

そういうわけで、ビジョンズが平均的なセットよりも少しばかり強すぎるのはなぜだろうと不思議に思ったことがあったら、赤いペンを持って悪魔的な微笑を浮かべた私を想像していただければいいでしょう。

彼らは電話する。

次の出来事は、およそ5年前に起きたことです。この物語はまた、私よりも2日だけ早くR&Dで働き始めたウィリアム・ジョックシュに関するものです。ウィリアムはこれまでの6年で、大部分のセットの開発に従事していました。彼は最近R&Dを去りました。

しかし彼の影響はゲームにおいてこれから来る何年もの間感じられるでしょう。この話は、なぜ彼はここR&Dで、いつまでも記憶に残っているのかということを説明する、多くの理由の1つとなるものです。

次の場面は、実際に起きたことです。無実の人を守るために、名前を変更することもしてないです。(誰をからかってるんでしょう? R&Dに無実の人間なんていないですよ)


ウィリアム・ジョックシュの電話が鳴る。

ウィリアムが電話を取る。

ウィリアム:
「もしもし。――あー、はい。私です。――はい、そうします。――はい、ペパローニ(※ピザの一種)を。――ありがとう。それじゃ」

ウィリアムが電話を切る。

ビル:
誰だったんだ?
ウィリアム:
ピザタイム(※ピザ屋の名)
マイク:
なんでまた(そんなところが)電話がかかってくるんだい?
ウィリアム:
私がまだ電話してなかったもんだから、それで私にかけてきたんだよ。
ヘンリー・スターン:
ピザ屋があなたに電話した?
ウィリアム:
今晩も、私がいつもの奴がいるか知りたかったからね。
私:
ちょっと待ってくれよ。ピザ屋が君に電話したのか?
ウィリアム:
心配してたよ。まだ私から連絡してなかったからね、それで電話してきたんだ。
ビル:
つまり、君はピザ屋に電話させるように訓練させたのか?
ウィリアム:
私が電話をしない場合だけだよ。

短い沈黙の後、みんなが拍手した。

R&Dの逆襲

メルカディアン・マスクス(その時のコードネームは「アルキメデス(Archimedes)」でした。「ゲームのコードネーム(Codenames of the Game)」を見ればより多くの情報があります)がデザインされていた間に、出版部門は(小説の)本を「メルカディアの仮面劇」(Mercadian Masques)と命名しました。私は、その時それが正直良い名前ではないと意見を述べました。とはいうものの、それは本の名前であって、エキスパンションの名前ではなかったので、特に自分の関知すべき問題だとは感じませんでした。ところが、それから何ヶ月もあとになって、マジックの商標チームが、エキスパンションと本は同じ名前を持つべきであると決定したのです。この時点で、それがひどいエキスパンション名だったと確信したので、それは私にとっての問題となりました。

周知のように、私たちの所には、エキスパンション名が満たさねばならない条件の一覧表があります。そして、「メルカディアン・マスクス」にはそのうちのいくつかの条件が不足していたのです。

第一に、私たちは名前が1単語であることを好んでいます。それはその基準に外れています。

次に、平均的なマジックプレイヤーが、その名前の意味を知っていることが重要です。これにも外れています。

第三に、プレイヤーがその単語を聞いただけで綴り(スペリング)を理解できる必要があります。またもや、外れています。

そして第四に、その言葉の響きが「かっこいい」(クールな)必要があるのです。これは確かに主観的な問題です。しかし、私はその名前は、この分野で手ひどく外れていると(今でも)信じています。

私は以上のようなことをとても強く感じたので、請願書を書きました。私たちR&Dの各メンバー(リチャード・カーフィールドも署名してくれました)が、その名前がエキスパンションには不適切だと感じていることを強く主張したものでした。マジックチームは同情的でしたが、彼らは本の名前とエキスパンション名とを一致させることと、本の名前がすでに変更できないということについては、譲るつもりはないようでした。要するに、彼らと私は意見が一致したのですが、すべては遅すぎたのです。

「オーケー」と私は言いました。「ならばせめて、より伝統的なつづりで"Masques"を"Masks"にすることはできないだろうか?」と。もう1度、私はノーと言われました。私たちが商標チームの決定を変更できないことを理解したので、長年のR&Dの伝統に則って、将来のデザインの際に、その決定を揶揄する(からかう)ことにしました。

このような行動の有名な例としては、アライアンスで行われたものがあります。(当時continuityと呼ばれていた)ストーリーの責任者たちが、アライアンス(の世界)には、知覚力があるゴリラの種族がいると決めたのです。アライアンスのデザインチーム、スキャッフ・イライアス(Skaff Elias)、ジム・リン(Jim Lin)、デイブ・ペティ(Dave Petty)、クリス・ペイジ(Chris Page)は、知的なゴリラというのは馬鹿げたアイデアだと思ったので、彼らの抗議として、アライアンスのすべてのカードをゴリラという単語を含むように改名したのです。(Force of Willの初期の名前は「ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ、それを止めろ!」"Gorilla, Gorilla, Gorilla, Gorilla, Gorilla, Stop That!"でした)

イベンジョンのデザインチーム(ビル・ロウズ、マイク・エリオットと私自身)は、似たような行動を起こす時だと決断しました。そこで、インベイジョンの初期のデザイン名で、私たちは全文を対象に「k」を「qu」で置き換えたのです。それで、例えば「Blacker Knight」のような単純なカード名は「Blaquer Qunight」になってしまったというわけです。結局、大勢の人たちが、そんなカードは簡単には読めないと不満を述べたので、開発中に、その名前は元に戻されました。

約束を約束する。

すべての休日には、伝統行事というものがあります。元日の場合には、人々は目標を決めて、そして2,3ヶ月後になってそれを諦める(「やっぱり無理だったよ」)ためだけに、実行することを目指すのです。

R&D(のメンバー)も、ふつうよりは少しばかり風変わりなことを除けば、同じようなことをします。私の大好きな新年の目標は、ビル・ロウズによってなされたものです。

みなさんご承知のように、ビルはブラウニー(※クッキーの一種。おいしい)が好きです。彼は家でよく家でそれを焼きます。12月も後半に入ったある日、ビルは、毎日ブラウニーを食べることができたらどうだろう、と言い出しました。

そのあと、元日にビルは、彼の言葉を守ることに金を賭けて、次の目標を立てました。

《毎日ブラウニーを食べる》

ビルの判断したところによれば、彼は非常にブラウニーが好きなので、毎日それを食べるということは、彼の総合的な幸福レベルを、引き上げることしかならないはずでした。

毎日、私たちはビル(が約束を守っているか)をチェックして、毎日、ビルはその日の分のブラウニーを見せびらかしました。これは、数ヶ月間続きました。

最終的に、ビルはある重要な発見に到達しました。もし毎日食べるのであれば、ブラウニーは特別ではなくなるのです。そこでビルは、ブラウニーを少なくとも(?)週に1回は食べることにすると固く誓ったのです。この最高の知恵に従って、ビルはそれ以来、この誓いを守っています。

ところで、もしあなたがビルのブラウニーの1つを口にする機会があるのなら、私は大いにそれらを推薦しておきます。それは非常においしいですから。

ビルの誓いのもう1つは、その年の後半に起きました。10月頃のことです。ビルと当時のマジックの商標マネージャーのジョエル・ミックが昼食に出かけていました。さて、ウィザーズ社はレントン(Renton)という地名のシアトルの郊外のまっただ中にあるので、私たちが食事する際に、場所を選ぶ余地がそれほど広くないということを理解しておいてください。その昼食中、ビルとジョエルはいつも同じレストランで食事しなければならないことについて話していました。

そして彼らは、その年の残りの期間、同じレストランでは2回食事をすることはしない(毎回、違うレストランに行く)と誓ったのです。ビルがどこへ昼食を食べに行くかを選んでいるところを見るのは、なかなか面白かったです。毎回彼は、今日は知っているレストランを「消す」日なのか、それともどこか新しい所へ行くのかを決めなくてはならなかったからです。

(後世の研究家のために)言及しておくと、ビルとジョエルはその年の終わりまでを乗り切ることに成功しました。しかし、1月になると、彼らは古巣に戻ったこと(なじみの店で食事できること)を喜んでいましたが。

この話で取り上げる最後の目標は、前のR&Dの長の、ジム・リン(Jim Lin)によって立てられたものです。

ジムはその年に、1年間で、つまり年100本のペースで、映画を観にいくことにしました。彼は12月31日までに本当に100本の映画を見ると誓ったのです。12月になったとき、ジムは少しばかり遅れてました。そこで、たいていの晩、彼は他のR&Dメンバーを誘って、彼がまだ見てなかった新しい映画を見に行きました。その年が終わってみると、彼は単に100本の映画を見ただけではなくて、それらすべてを批評した文書まで書き上げていたのです。その伝統は今日に至るまで続いています。

フレーバー・テキストは、時には2つの物語を示す。

何年も前に(アライアンスの頃に)、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストはネットランナー(Netrunner)と呼ばれるゲーム(※Zviがファンなことは有名)を制作しました。それは(マジックと JyhadもしくはVampire: the Eternal Struggleの後で登場した)リチャード・ガーフィールドの3番目のトレーディング・カード・ゲームでした。

ネット・ランナーのアート・ディレクターは、クレイグ・フーパー(Craig Hooper)という名前でした。ウィザーズにおいて働くことには、ある種の利点があります。クレイグは彼のコネを使って、当時のマジックのアート・ディレクター、スー・アン・ハーキー(Sue Ann Harkey)に頼み事をしました。クレイグはアーティストであり、マジックのために絵を描く機会を心から欲していたのです。スー・アンはそれを引き受けました。

それで、次のセット(ミラージュ)が近づいてきたときに、スー・アンはクレイグに1枚の絵を発注しました。それは、《真紅のヘルカイト/Crimson Hellkite》と呼ばれるものでした。それは、そのセットにおける大きなドラゴンの1つでした。

マジックにおいて、ドラゴンというのはとても重要な存在です。ドラゴンというのはカードの価値を膨らませる貴重なクリーチャータイプ(他には天使とか、あと、程度はだいぶ落ちますが、吸血鬼がいます)の一つです。クレイグは、次のような絵を作り上げました。《私たちの希望にまったく合致しない》ものを。

その絵は、クローズアップにすぎていて、さらにドラゴンはおかしなにやにや笑いを浮かべていたのです。それは、セットのドラゴンのショー・ケースとしては不適当なものでした。そのため、R&Dはそれを拒絶したのです。スー・アンはその絵を弁護しました。しかし、結局それがよくないものなのは明らかになりました。

それで、スー・アンはジェリー・グレイス(Gerry Grace)に新しい絵を依頼しました:こちらには、私たちの求めていたものが大いにありました。そこで私たち真紅のヘルカイトに、それを使いました。

けれども、物語はここでは終わらないのです。ミラージュの次のセットは、ビジョンズでした。スー・アンはR&Dにやってきて、なぜヘルカイトの絵を変更しなくてはならなかったかは理解している、と言いました。そして、ビジョンズでクレイグの絵を使うように《力説/Insist(TO)》したのです。彼女は、クレイグの経歴にマジックのカードアートを加えることを約束していたし、それを取り下げることなど考えてなかったのです。このことは、R&Dに、本当の困難をもたらしました。クレイグの絵は私たちがドラゴンの絵に必要だと考える水準を満たしておらず、ドラゴンらしくないと感じていたのです。

ビジョンズの開発の早い段階で行われたミーティングで、私たちは何をするべきか話し合いました。私たちはセットに2体のドラゴン、《炎の嵐のヘルカイト/Firestorm Hellkite(VI)》と《ヴィーアシヴァン・ドラゴン/Viashivan Dragon(VI)》を用意していました。しかし、どちらにもその絵が適さないのは分かっていました。私たちは、その絵にマッチしたカードを作る必要に迫られたのです。もしそれがドラゴンでないとしたら、それは何なのだろうか?

それから私は解決策を思い付きました。

そのカードが、ドラゴンを模した品物だということにすればどうだろうか?

もしそれが、ドラゴンの仮面だったらどうだろうか?!

解決策は完璧なものでした。私がフレーバーテキストチームにこの話を伝えたときに、カードのための最後の仕上げが生み出されました。ビジョンズのストーリーで、ドラゴンを非常に憎んでいる(それが彼女のカードの能力でした)女性、ラシーダ・スケイルベインに、苦境を切り抜けるために、《ドラゴンの仮面/Dragon Mask(VI)》をつけさせたのです。このことで、1つではなく、2つの異なった物語をほのめかしたフレーバーテキストを収録することができました。

「もはや選択の余地はなく、わたしはドラゴンの仮面を被るしかなかった。

――ラシーダ・スケイルベイン」

そして、みんな、いつまでも幸せに暮らしました。

あなたが今回の私の物語を楽しんでいればよいと思います。

来週は、私はマジックにおける「無限」を探求するでしょう。

その時まで、あなた自身のマジックの物語をたくさん味わっているかもしれませんが。

当ページは、2ちゃんねる卓上ゲーム板「MTG Sideboard Online 日本語版」スレッドに投稿された記事を、426(braingeyser-lj@infoseek.jp)がまとめたものです。