- 原文
- I Never Metagame I Didn't Like
- 著者
- Mike Flores
- 訳者
- タイ屋
- 投稿日
- 2002-10-25
- 更新
- 2003-06-29
449 名前: タイ屋 投稿日: 02/10/25 01:56 ID:???
突如としてやたらに古い記事を。初出はDuelist誌33号=サーガの出る直前か直後。
D5Cの記事の補足、あるいは昔サイドボードに載った「Tinker デッキへの探究」の 初期段階のような感じで見てもらえばいいかと。
競技マジックにおける最初の本当のアーキタイプと考えられている「ワイズマン・デッキ」は、なにが来ても対応出来るコントロールデッキで、初期のパワーカードすべてを使っていた。ワイズマン(※デッキ名でなくオリジネイターのBrian Weissmanのこと)は、《Mind Twist/精神錯乱(4E)》のようなぶっ壊れたカードが、対戦相手のリソースを圧倒するための能力を持っていることを理解していた。1枚の精神錯乱が、多数のカードを叩き落とした。1枚の《Moat(LG)》が、すべての地上クリーチャーの攻撃を無力化した。現在ではカード・アドバンテージと呼ばれているこの原則は、それ以来ずっと、トーナメント(で勝つための)戦略に影響を与えてきた。
メジャー・イベントは、範囲の広いタイプ1(クラシック)から、新しく登場した、より「公平」なタイプ2(スタンダード)へと、プレイの場を移した。引き続き、ぶっ壊れたカードが、すべての戦場において、トップテーブルの状況を規定し続けた。
1995年のアメリカ選手権と世界選手権は、スタンダードを2つの種類の「黒」デッキに分裂させた。一方は4枚のHymn to Tourachが入っており、もう一方は4枚の「黒」の万力(4E)が入っていた。これらの2つの戦略は、大きく違った面の目標を持っていた(一方が希望するのは、大量の手札、もう一方は少ない手札)が、一つだけ共通する能力を持っていた。――両方とも、信じられないほど速かったのだ。
手札破壊デッキ(通常は黒単色)のプレイヤーはこんなこともできた。1ターン目に《暗黒の儀式/Dark Ritual(4E)》から《Hypnotic Specter/惑乱の死霊(4E)》をキャストして、続いて2ターン目には《Hymn to Tourach(FE)》かあるいは何か速いクリーチャーで追い討ちをかけて、その後は、次のゲームのためにシャッフルしている――瞬く間の勝利のあとで――というような。他方、《Black Vise/黒の万力(4E)》は、クリス・ピキュラがかつて「無料の稲妻(4E)3発」※と呼んだ、マジック史上最高の効率を誇る1ターン目のダメージ源である。
※原文「Three Free Bolts」。1ターン目3ダメージ、2ターン目3ダメージ、3ターン目で2ダメージ、4ターン目1ダメージ。トータル9ダメージ、というような動きのことだと思う。
ヘンリー・スターンの「バイス・エイジ」デッキは、多数の《Howling Mine/吠えたける鉱山(7E)》によってバックアップされた、早いターンで登場する万力を主力としていた。鉱山は、手札を減らすパワーを妨害して、対戦相手を万力でダメージを受ける圏内に留め、そして「バイス・エイジ」のプレイヤーに、不運な対戦相手と攻撃クリーチャーに対して使うための火力をコンスタントに供給していた。
これらのデッキが環境を決定づけたことを知った上で、マーク・ジャスティスは1995年のナショナルのタイトルを勝ち取るためのメタゲームを行った。ジャスティスは、除去しにくい、そして危険度を増加させていく《Whirling Dervish/疾風のデルヴィッシュ(5E)》を使って、黒単色デッキを打ちのめした。彼は自分の《黒の万力》にパワーを供給して、直接ダメージでいっぱいの手札を維持するために「バイス・エイジ」から《吠えたける鉱山》を使っていた。標準的な戦略のどちらもプレイしないことで、ジャスティスは両方ともを負かすことになった。
スタンダード環境は《Black Vise/黒の万力(4E)》の制限カード指定で根本的に変化した。プレイヤーはもはや手札を少なくする必要がなくなった。スピードではなく、《Land Tax/土地税(4E)》と《Necropotence/ネクロポーテンス(IA)》の、カード・アドバンテージが決定力になることができた。
依然としてぶっ壊れた《Balance/天秤(4E)》のトップデッキがゲームに君臨してはいたが、戦略はより一貫したものとなり、プレイした《Erhnam Djinn/アーナム・ジン(CH)》を《Armageddon/ハルマゲドン(6E)》で守るとか、《ネクロポーテンス》/《Drain Life/生命吸収(5E)》エンジンを確立して対戦相手をドローで引き離すとか、そういうのが一般的になっていった。
この変化によって、マイク・ロコント(Mike Loconto)は、最初のプロツアーで遅い青白デッキで優勝することができた。皮肉にも、次のトーナメント環境は、そこでは優勝できなかったデッキによって決定付けられることとなった。騎士たちと《Hypnotic Specter/惑乱の死霊(4E)》による攻撃が入っているレオン・リンドバック(Leon Lindbach)のデッキは、古くからの手札破壊デッキに似ていた。しかしながら、彼は4枚のネクロポーテンスを加えたことで、マジック・メタゲームの新時代の先駆けとなった。
1996年6月までに、スタンダードは「ブラック・サマー」に突入していた。勝利を求めるプレイヤーはすべて、複数のネクロポーテンスを使ったか、あるいはネクロの力を破ることができたデッキでプレーするかした。ネクロポーテンスと生命吸収のドローパワーが、4枚の《Hymn to Tourach》と4枚の《Strip Mine/露天鉱床(4E)》という完全な優勢なカードと結合することによって、ほとんどのトーナメントに君臨した。
ほとんどのプレイヤーが、ネクロデッキがその祖先の手札破壊から継承した儀式 / スペクター / 騎士による純粋な攻撃速度に対抗できないことに気づいた。トム・チャンフェン(Tom Chanpheng)は、1996年の世界チャンピオンの座を奪い取るために、メインデッキから12枚の黒からの防御を持つクリーチャーを投入せねばならなかった。これは、メタゲームへの対応のもう一つの完璧な例である。
1997年の春までに、スタンダードの1枚制限カードリストには《Hymn to Tourach》と《露天鉱床》が含まれた。※
※正確には、96年10月から1枚制限で、97年1月からは他の1枚制限とともに禁止カードになった。この間の、ミラージュが使用可能になってから1月のFE,IA落ちまでのタイプ2が「ダラス・スタイル」とも呼ばれる、プロツアー・ダラスのフォーマット。PTパリ予選が(実際のスタンダードでなく)このフォーマットで1997年春に行われたので、こういう表現にしてるんだと思う。
色のバランスは、今や、幾分か調整された(とにかく黒と白の間では)。そして、2つの強力なデッキが、プロツアー・パリの予選期間に出現した。ネクロポーテンスの変種と、コントロールの変種である。全体的なカード基盤が弱まった一方、新しいネクロデッキは、依然としてゲームにおける最強力なカードドロー・エンジンを握っていた。 しかし、青白デッキは、ミラージュのチューターを使って制限カードを取ってきて、《土地税》と《Zuran Orb》とか、《Zuran Orb》と《天秤》といったような、ぶっ壊れたコンボの復活を楽しんでいた。
そして、それにもかかわらず、このパリ予選の間に、ニューヨーク州イサカからやってきたほとんど無名のプレイヤーが、(当初は)あざ笑われた「スライ」デッキを使って両方の戦略を倒し、三番目の主要なアーキタイプの存在を知らしめた。直接ダメージの終わることのない供給によって、デヴィッド・プライスは、ライフによって束縛されているネクロのプレイヤーたちを焼き尽くし、一方彼のウィニー・クリーチャーの大群が、コントロールデッキを押しつぶした。《Ball Lightning/ボール・ライトニング(5E)》とともに、プレイスのデッキは大量のダメージを与えた。・・・そして、それは依然としてそうしている。
1997年のナショナルで、デビッド・プライスは、「デッドガイ・レッド」と呼ばれる彼の修正型「スライ」デッキを使って、マジックの伝説となった。たいていのプレイヤーが青白デッキ(4つの遅い《Thawing Glaciers(AL)》が入った)か、あるいは(今や《Ivory Tower/象牙の塔(4E)》と《Zuran Orb(IA)》を欠いている)自己破壊的なネクロディスクを使うだろうとの想定により、プライスは火力と《ボール・ライトニング》と《Lava Hounds/溶岩の猟犬(WE)》の入った全面的な突撃型デッキを作った。プライスは、《Thawing Glaciers(AL)》と一緒にタップアウトしたプレイヤーを蹂躙して、ネクロ使いたちをさらに速く墓場送りにした。みじめなドラフトでの成績のために、彼は3日目(決勝ラウンド)へと進むチャンスはなかったが、プライスはスタンダードで6−0の完璧な成績をたたき出し、「夢を砕くもの」と「ビートダウンの王」の名を得た。
プライスが赤を有名にしてから1年が過ぎ、スタンダードは依然として3つの陣営に分かれている。:「デッドガイ・レッド」(スライ)、「クネオ・ブルー」(コントロール)、そして黒/緑「ナイトメア・サバイバル」(黒のカードアドバンテージ)。
「デッドガイ・レッド」は、1997年のナショナルのプライスのビートダウンデッキとのつながりを維持しており、《ボール・ライトニング》と《火炎破/Fireblast(VI)》によって、莫大な量のダメージを与える。しかし、それは今や強力な1マナのクリーチャーと《呪われた巻物/Cursed Scroll(TE)》とによって、より一層、隙のないものとなっている。
「ナイトメア・サバイバル」にとっては、「デッドガイ・レッド」は完璧な引き立て役でしかないかのようだ。壁といらいらさせるスパイクたちで攻撃的なデッキをスローダウンさせて、ゲームを長引かせる。そうなれば、巨大なクリーチャーか、究極のカード・アドバンテージを得る方法――《Living Death/生ける屍(TE)》による復活――を使って投了させるかして勝てる。
この三角形を完成させるために、「クネオ・ブルー」が黒/緑をコントロールする。そのパーミッション呪文の基盤は、高コストの墓地からの復活呪文を阻止して、《Nevinyrral's Disk/ネビニラルの円盤(5E)》と《ミューズの囁き/Whispers of the Muse(TE)》によって、主導権を握る。不幸にも、1ターン目の《ジャッカルの仔/Jackal Pup(TE)》は、しばしば焼き殺される前兆となるが。
ミラージュブロック、特にパワーセットであるビジョンズの退場によって、メタゲームは確実に再編成される。古いアーキタイプは疑う余地なく弱められ、一方で新しく入ってくるセット(ウルザズ・サーガ)は、新しいアーキタイプを誕生させる。
その結果は?
環境での新しい力の均衡、進化しつづけるトーナメントのメタゲームのための新しい章、といったところだろうか。
書き忘れていたが、原文は最後に、「マイク・フロレスは多作のインターネットライターで、月刊誌に書くためには彼のコンピューターをスロー・ダウンさせなければならなかった」という一文がイタリック(つまりフレーバーテキスト)で入っている。
「現在の、そして未来の王」と訳したけど、原文は「The Present and Future Kings」で、どう見てもアーサー王の墓碑銘の「過去の王にして、未来の王」を踏まえたものだと思うけど、うまくそれを察することのできる日本語タイトルにできなかった。
なお、D5Cの記事だと、原文でも1996年ナショナルのスタンダードがDAY 1だったことになっているが、もちろん1日目はドラフトである(確認済)。