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オールド・スイッチェルー

原文
The Old Switcheroo
著者
Mike Flores
訳者
タイ屋
投稿日
2002-10-19
更新
2003-06-29

「彼がアーナムをプレイした時に、誰かが、フィンケルがクリーチャーを入れてるよ、と言ったのを覚えている。第3ゲーム、私は負けた」

− 元カナダチャンピオン、Peter Radonjic。

彼の1997年プロツアー・シカゴのトーナメントレポートより

オールド・スイッチェルーというのはサイドボードするときのテクニックで、マジックが出版されたのと同じくらい昔にまで溯る起源がある、マジック戦略上の一派だ。単純化すると、ある種のパーマネント(ほとんどの場合はクリーチャー)が、非常に少ないか、または全く入ってない状態のメインデッキでプレイして、サイドボードからそのタイプのパーマネントを複数投入して、対戦相手の隙を突いてやろうというものだ。

上に引用したRadonjicが言ってるのは、ジョン・フィンケルが1ゲーム目でノンクリーチャーのプリズンデッキをプレイしていたのに、アーナムジンとワイルドファイアの密使を2ゲーム目と3ゲーム目で投入してきたってことだ。なぜジョンはこんな感じの戦略をプレイしたのか? なぜこの種の戦略が機能するのか? ちょっと見てみようか。

第一ゲーム、フィンケルのデッキは、コンボ/ロックで勝つ。勝ったときの状態は、まあどうでもいい。なにせ、彼は《Icy Manipulator(IA)》2枚と《Winter Orb/冬の宝珠(5E)》を出したので、対戦相手は1マナの呪文をアップキープ中にプレイすることしかできない(ミラージュの各種ダイアモンドか、《Fellwar Stone/友なる石(4E,5E)》がなければ、だが)状態になった。ジョンの勝利は事実上間違いないものとなり、彼が実際になにで勝ったのかというのとはほとんど無関係だ。

彼の対戦相手がゲームが進行するにつれて追い込まれたマナ不足状態がどんなものかは言及しないでおく。フィンケル自身の動きについて付け加えると、対戦相手の(マナロックの邪魔をできる極楽鳥とラノワールのエルフを含む)クリーチャーを処理するためには、《Pyroclasm/紅蓮地獄(7E)》《Serrated Arrows(HM)》《Swords to Plowshares/剣を鍬に(IA)》か《Wrath of God/神の怒り(7E)》がある。最終的な勝ち筋は、《Gaea's Blessing/ガイアの祝福(WE)》の繰り返しか、《Mishra's Factory/ミシュラの工廠(4E)》での2点ずつのアタックがある。

このリストが、ジョナサンのマジックの最初の(成人※の)プロツアートップ8のときのものだ:

※昔のプロツアーは成人部門とジュニア部門に分かれていた。フィンケルはジュニア出身。なお、未成年のはずのオーレ・ラーデが、自国の法律では成人だったので、PTコロンバスで優勝できたのは有名な話。

第1ゲームで対戦相手は――特に白を使っている場合は――自分のクリーチャー除去がほとんどまったく役に立たないということに気づく。もしジョンが場でロックを決める前にミシュラの工廠(複数形)でビートダウンすることにしたのであれば、彼の対戦相手がその土地を剣を鍬にで止めたかもしれないとは思う。・・・しかし、ほとんどの場合、無駄ドローになるクリーチャー除去呪文はすべて、サイドに引き揚げられるとも思う。ひとたびジョンのコンボの牙にかかって、ソフトマナロックに捕まってしまったら、誰でも敗北を認めて、2ゲーム目のために、ありったけの《Disenchant/解呪(4E,5E)》を持ってくるというのは明白な事実となるだろう。

オールド・スイッチェルー (tm)へようこそ。

今や、かの対戦相手は、この思考パターンに基づいて、アーティファクトベースのコンボデッキを破壊するだろう。彼がクリーチャー除去呪文いっぱいの手札を抱えて立ち往生なんてことも起きないだろう。まったくその通り。

彼は手札を見て、そしてたぶん2枚の解呪風味の呪文と、増強型騎士※1枚と2枚の土地があるのを見るだろう。

※《Order of Leitbur(FE)》にはじまり《Order of the White Shield/白き盾の騎士団(5E)》に受け継がれる、ポンプアップできる騎士の総称

彼は手札を保持する。

彼は非常に楽しく「マリガンはしません」と宣言するだろう。

彼は、増強型騎士を召喚した返しに、《Marble Diamond/乳白色のダイアモンド(7E)》が出てきたのを見る。

「いやいや」と彼は考える。あんなMarble Diamondみたいなものに解呪を無駄に使わない方がいい、と。

彼は騎士で攻撃して、ダメージを増やすためにマナを使うことを考える……。

彼が適切にプレイして、このターンに解呪を使うといけないので、私は事実を伏せておくことにしよう。

彼は3ターン目に、テーブルの向かい側にアーナム・ジンが出現するのを目撃する。

オールド・スイッチェルーがこの例でこれほどよく機能する理由は二つある。まず第一に、ジョンのデッキはアーティファクトとエンチャントに依存する部分が非常に大きい。(第1ゲームでは)対戦相手は何枚かのダイアモンドやIcy ManipulatorやSylvan LibraryやWinter Orbといったような、フィンケルにはっきりしたアドバンテージを与える奴らに対して、ただ手をこまねいて見ている以外に選択肢がない。(サイドボード時には)対戦相手はアーティファクトやエンチャントを割ることのできるものなら何でも、全部、持ってくる以外に選択肢はない。彼は、自分の勝ち筋を抜いてまでそれらを投入しようとはしないだろう。そこで、アーティファクト/エンチャント対策呪文を入れるために、クリーチャー対策呪文を抜くというのが非常に妥当な判断となるだろう。

なぜなら白の除去は、マジックの歴史のこの時点において流行している。それらは早くて効果的であり、白い除去呪文は、1997年においてはクリーチャーを殺す(剣を鍬に)のと同様にSerrated Arrowsも殺せる(解呪)。アーティファクトを殺せるようにした対戦相手は、もはや素早く危険なファッティを殺すことはできないようになっているだろう。

その戦略の弱点:

「びっくり!」サイドボードが効果的には機能しないケースが2つある。そのうちの一つは、相手のデッキが特にアクティブな戦略(proactive strategy)に集中していた場合である。こっそり持ち込まれたクリーチャーは、依然としてこの相手を止められない。

例えば仮に、対戦しているデッキがある種のパーマントを破壊する能力を持たないとか、あるいはそれだけじゃなくて他の種類のパーマネントも壊せないとかであれば――または、ある種の黒のビートダウンデッキがそうであるように、例えば手札破壊以外にエンチャントを止める手段がなかったり、呪われた巻き物以外でしかクリーチャーを殺せなかったりとかいうようなのも、このケースに含まれるが――対戦相手にとってはオールド・スイッチェルーがあっても、大した違いはないだろう。

「エンチャントに負けるのか、クリーチャーに負けるのか、そんなことはどちらでも同じだ。アンタの計画になんて興味はない。オレは妨害※プラス、速いダメージクロックでアンタを倒すつもりだ」

※原文はdisruption。概念的には手札破壊とかの「コントロールとは違うが、相手の行動を邪魔する」ぐらいだが、適切な日本語のマジック語があったかは覚えてない。

このスタイルのデッキに対しては、より伝統的なサイドボード戦略の方が、ほとんど常に「変形サイドボード」よりも効果的に機能するだろう。

それどころか、オールド・スイッチェルーを仕込んだデッキが、不利を被ることになるかもしれない。対戦相手のサイドボードカードが、デッキのどちらの状態にも効果を発揮するものだったかもしれないし、同時に、サイドボーディングそれ自体が、カードの相互作用に、最小の影響しか与えないかもしれない。

アンチコンボデッキは、同じ問題のさらにいっそう純粋な例である。一般にそれは、パーミッションとか、いくつかの場合では解呪スタイルのカードが意味する、コンボを破るための能力をデッキに与えている。しかし、大部分のケースでは、それらのデッキは――大抵の「びっくり!」サイドボードが繰り出せるよりも――早くて一貫したクリーチャーによるビートダウン戦略のために調律されている。

「びっくり!」サイドボードが、もはやびっくりではなくなったときに、より微妙な問題が出現する。明らかに、このテクニックは、トーナメントの初期、対戦相手が(すでに)オールド・スイッチェルーに出くわしていてそれについて知ってるなんて可能性のないときに、もっとも効果的である。もちろん対戦相手がサイドボードの計画について知っているとき、「びっくり!」サイドボードのプレイヤーは、対戦相手が計画を知っているということに気づいて、二人のプレイヤーの間で激しい読み合い(フィンケルが「サイドボード戦に勝つ」とよく言ってたのはこれのことだ)が行われることになる。

サイドボード戦は、いずれにせよ入り組んでおり、あるレベルデッキのプレイヤーは、対戦相手のRebel InformerやMassacreに対してレベルをサイドアウトしたり、また別のプレイヤーは4/5のビートダウン生物を《Control Magic/支配魔法(4E)》で奪われるのを避けるためにアーナムジンをサイドボードに下げたりするかもしれない。その戦略は、オールド・スイッチェルーを真似たものとも言える。つまり、非効率なドローを対戦相手に押しつけることで、キーとなるパーマネントに対応できない手札を抱えさせて立ち往生させるというものなのだ。

オールド・スイッチェルーの現代的運用

「びっくり!」サイドボードテクニックに強く専念した運用例として記憶に新しいのは、edt(エリック・テイラー)によるもので、彼はこの春のミルウォーキー市で、クリーチャーによる強打で成功した。

Edtの変形サイドボードは特に面白い。なにしろハッタリに基づいた頭脳戦と単純に死に札を製造させる以上のレベルのプレイだからだ。

明らかに、彼のデッキはノン・クリーチャーのコントロールデッキとしてスタートする。当然、対戦相手の使う一般的な除去呪文、《Flametongue Kavu/火炎舌のカヴー(PS)》や《Repulse/排撃(IN)》のような呪文は、最小限の有効性しか発揮できない。彼は対戦相手を変形戦略で不意を付いて、そのまま効果的なサイドボードからのクリーチャーで押しつぶしてしまえる。同時に、この「びっくり!」サイドボードが、実際のedtのトレンチデッキを、何枚かサイドボードした対戦相手に対して、より一層効果的にしている。

彼は行き詰まり/サイカトグデッキ(Zevatokg)に対して、1ゲーム目はまったくの楽勝だと気づいたかもしれない。しかし、トレンチとインスタント呪文による攻撃計画が、強迫(7e)と枯渇(7e)をセットにしたデッキに対抗するには有効性が低いということにも気づいたかもしれない。Edtはこれらのデッキに対して、複数のレベルから攻撃をしかけ、完全なコントロールデッキとしてではなく、さりとて完全な攻撃型デッキでもない、しかして両方の要素で十分な強力さを保ち、対戦相手のサイドボード戦略の焦点を外させることができたはずである。

このことから、我々は「びっくり!」戦略によって成功するために最適化したコンディションを推論できる。上記のフィンケルのデッキを、もう一度見てみるとしよう。

2つのノン・クリーチャーのプリズン・スタイルのデッキを想像して欲しい。どちらも何トンものアーティファクトとクリーチャー除去でいっぱいだ。両方のデッキは、サイドボーディングの後では、クリーチャー除去はどけてしまって、相手の《Icy Manipulator(IA)》よりも一歩先んじるためのコントロール要素の方を選ぶだろう。

一方のデッキがフィンケルのサイドボードを持ち、他方のデッキが伝統的なままである時、特に2番目のデッキが、一つ目のデッキのオールド・スイッチェルーに気づいてないというような情報の不均衡があるとしよう。その場合、脅威となるカードの種類の違いによって、一方が相手を文字通り押しつぶしてしまうだろう。しかも、依然として対戦相手のカードに対する対抗策も(メインデッキに)保持したままで。誰だってこの「ミラー」マッチ※で、「相手がアーナムジンをサイドボードに用意しているとは知らなかったよ」とは言いたくないだろう。

※あえて"mirro"と引用符で囲んでいるのは、両者のサイドボードが違っていることを示唆しているのだと思う。

edtの特別なサイドボードのまた違ったユニークな状態が本当に輝いたのは、決勝戦で、彼のよき友人でもあるパット・チャピンと対していたときだった。

パットは、2色のリスの巣デッキをプレーしていた。火炎舌のカヴーを持たず、対立が出てない状態だったので、edtの《Lightning Angel/稲妻の天使(AP)》が出たときには全く対処できなかった。稲妻の天使はパットのクリーチャーのほとんどすべてを止められるサイズであり、ダメージレースでも申し分ない。同時に、edtのサイドボードの火炎舌のカヴーは、パットのデッキのような、優勢なクリーチャーベースに対抗しにくいデッキに対しては、非常に強力なものとなる。4枚のMeddling Mageと2枚のAura Blastは、このマッチアップで唯一の問題となるカード(つまり対立)を無効にする。edtはサイドボード後のゲームでの戦略的なアドバンテージをほとんど保証されているのも同然だった。

スイッチするか否か、それが問題だ

これらの個々の事例からあなたが推測できたように、変形サイドボード戦略は、歴史的に見て、ノン・クリーチャーかあるいはクリーチャーの少ないコントロールデッキにおいて、最も効果的なものだった。

この点に由来する「びっくり!」の問題点は、現代とは、《Burning Wish/燃え立つ願い(JU)》と《Cunning Wish/狡猾な願い(JU)》(クリーチャーを加えるギミックにとっては逆説的ながら、《Living Wish/生ける願い(JU)》ではなく)が、青いデッキに入っている時代だということだ。サイドボードのスペースは、これらのために、かつてないほど貴重なものとなっている。特定のデッキとクリーチャーの選択に依存している場合、その変形用のクリーチャーは、ほとんどかあるいは全部のサイドボード(edtはスロットの11/15を取っている)を占めてしまうだろうし、オールド・スイッチェルーとWishベースのメインデッキとは共存し得ない。

それはしかし、ある程度のデッキとサイドボードの変形が、来るべきスタンダード環境では実行不可能となるとまでは言えないだろう。

私が先週公開したデッキ、D4C 2002(4カラー・ドネ・2002年版)は、メインデッキではエンチャントもアーティファクトも使わない。しかし、ゲームを決めるだけのポテンシャルを持ったエンチャント、大変な邪魔物になるとか、ほとんど常に相手の戦略を破壊してしまうであろうもの(《Compost/たい肥(7E)》と《Engineered Plague/仕組まれた疫病(7E)》)を持ってくることができる。これらのエンチャントメントの脅威は、2ゲーム目や3ゲーム目でそれらを出さないとしても、「サイドボード戦に勝つ」読み合いで、潜在的に解呪やNaturalizeを無駄にさせることができる。

もう一つの運用例は、クリーチャーベースのビートダウンデッキに、2つの戦略的なエンチャントを導入するものだ。それが直観に反するように見えるかもしれないが、ズヴィ・モーショヴィッツは、Brian KowalがGPミルウォーキーでプレイしたようなタイプの緑赤の《Reckless Charge/無謀なる突進(OD)》デッキに、3枚か4枚のリスの巣をサイドボードに入れることを考えたことがある。

この意外な戦略について最小限言うべきは、リスの巣は、ビートダウンプレイヤーに、神の怒りの後のターンも引き続き破壊的な脅威を作り出せるようにするということだ。サイドボード後のデュエルで、もし対策されてない脅威を繰り出せれば、本当にそれだけでゲームを終わらせるだろう。

あなたの対戦相手を驚かせるのを楽しむように。

原文:
http://www.wizards.com/default.asp?x=sideboard/strategy/20021015a
著者:
Mike Flores
翻訳:
タイ屋
参考:
http://www.geocities.co.jp/Playtown/1662/mnik0210.html
ほかいろいろ

いやー、文章簡単だけどデッキリスト長い。2回も規制を受けたのは初めて。

今回は、いつも読んでるメールマガジンに、

私は、内容をとらえて、形は引きずらず、むしろ形がゴロッと変わってしまう訳文を書く方がカッコ良いと思っているのですが

と書いてあったのにつられて、いつもの直訳調の部分と、激しく変わっているところが混ざってしまった。

あと、カード名は最初はもっと日本語併記にするつもり(特にデッキリスト)だったけど、「トレンチぐらい日本語ついてなくてもみんなわかるだろう」「フィンケルのデッキはカード名だけでわかるような人なら英語でも問題ないだろう」と考えて結局こんな形に。

今回悩んだのは、The old switcherooをどう訳すか。語義通りの「どんでん返し」とでもするかとか思ったけど、「昔からあるマジック語」である以上そういうわけにもいかない。それに、old switcheroo自体でフレーズっぽいが、あれこれ調べた(辞書サイトを10やそこらはチェックしたと思う)が判明せず。いっそ日本語兼他に意味のある単語ってことで「V作戦」※と訳すかとも思ったが、さすがにやり過ぎなのでやめた。

※「V作戦」・・・「最後のMoMa使い」大橋“ウッシッシ”綾平が、1998年の日本選手権で"V"erdant Force(TE)をサイドから投入して実物提示教育で出すというメソッドで快進撃した故事に由来する言葉。どうでもいいけどM尾G郎さん、トーナメントが終わってもないのに「なんかさー、サイドからショーアンドテルでバーダント出すんだってさー。スリヴァークイーンかセラアバかで悩んでたオレたちがバカだったよ、ガハハハ」とか大声で(普段通りの声で)言うのはどうかと思います。

(民明書房刊「マジック用語集」より抜粋)

当ページは、2ちゃんねる卓上ゲーム板「MTG Sideboard Online 日本語版」スレッドに投稿された記事を、426(braingeyser-lj@infoseek.jp)がまとめたものです。