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ズヴィの計略
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- 原文
- Draft 2: Zvi Mowshowitz
- 著者
- Toby Watcher
- 訳者
- 高潮の翻訳者
- 投稿日
- 2002-07-
- 更新
- 2003-06-29
ひょっとするとPTニース初日最大の話題は“ズヴィの計略”だったかも知れない。多くのプレイヤーがトーメントでの弱さを理由に白をドラフトしたがらないことを踏まえた上で、ズヴィはインターネットを通じて世界中に自分が白を決め打ちでドラフトすることを宣言した。さらに、このメッセージを全てのプレイヤーに確実に伝えるために、自分でデザインした「白魔道士Tシャツ」まで着る念の入りようだ。こうすれば、上流のプレイヤーたちが色がかぶるのを恐れて《盲信者》や《エイヴンの群れ》や《避難》なんかを流してくれることが期待できるわけだ。この戦略に懐疑的だったプレイヤーも居たが、数字は嘘をつかない:スコット・ジョーンズとズヴィ・モーショヴィッツ、つまりただ二人の「白とっちゃうよ」Tシャツ着用者たちは、ふたりともファースト・ドラフトを3−1で終えたのだ。
ズヴィの開けたパックからは《気力あふれる放浪者》《ナントゥーコの信奉者》《病的な餓え》が出て、当然白の強力クリーチャーをピック。さらに宣言通りに白に進み、《霊気の噴出》の入っていた2パック目からは《尊い癒し手》、続いて《熟練の薬剤師》とドラフトしていく。二色目は《集中砲火》《蛮族の狂人》と赤に定めると、7手目にはなんと《神秘の盲信者》が取れる。その後《美徳の巡礼者》も《薬剤師》に手を貸しに来てくれた。
2パック目、大問題が現れる。《陰謀団の総帥》だ。オデッセイの限定戦では最強クラスのカードだが、ズヴィはここまで全く黒を取っていないし、既に白のトリプル・シンボルの《薬剤師》を手にしていた。それでもズヴィは賭けに出た。これを取り、《集中砲火》を流したのだ。2手目には《盲信者》をピック、そして3手目、決断の時が来る。《幼年期の怪物》を取って黒になだれこむのか、《蛮族の狂人》をとって赤に戻るのか、《ミリキン人形》を取って決断を先送りにするのか。ズヴィは《狂人》を取った。そしてそこからはまっしぐらに赤白に進んだ。7手目に《避難》が流れてきて、3パック目のトーメントでは《一時的狂気》《生まれ変わった勇士》《大音響攻撃》などを手に入れた。
(筆者がズヴィの隣に座ると、ズヴィはこちらが質問するより先に《陰謀団の総帥》の場面の解説を始めた)
- ズヴィ:
- 私は大きなミスをしたが、幸いにも致命的にひどくはなかったようだ。16枚目に正当な理由もなく《陰謀団の総帥》を取ってしまった。“なにをやってるんだ? もう《熟練の薬剤師》を持ってるんだぞ! 手元にあるカードは全部白と赤のカードだってのに、白白白の上に黒黒黒まで入れようってのか? 頭がおかしいぞ!”――という感じだったが、幸いにも3手目のパックで《幼年期の怪物》と《蛮族の狂人》を見た時には、もう私の脳は正常に働いていて、それ(《怪物》)まで取ってしまうことはなかったんだ。
――こっちは『なんで黒に向かわないんだろう?』って思いましたが。
- ズヴィ:
- どんなマナベースになるか解ってて言ってるのかい?
――ええ。
- ズヴィ:
- もし《熟練の薬剤師》を持ってなければ、賭けてたかも知れない。ただ問題は、私のところには黒が回ってきてなかったことで、つまりJensがその時点では青黒をやってただろうということだ(Jensがズヴィの上家だった)。もし2パック目の回りでも黒が来ないようだったら、いよいよ深刻な失敗になるだろうし、私の戦略を諦めてまで黒を取る理由は何もなかった。私はそんなに頻繁に黒をドラフトするとは思われてないし、実際他のプレイヤーが私に黒を回してくれると考える理由もなかった。黒の散らしでは《陰謀団の総帥》を入れることはできない。《集中砲火》を既に一枚持っていたのだから、二枚目を素直に取って、《総帥》をJensに回して確実に黒に向かうように仕向けるべきだった。それだけのことだったんだ。
――しかし、《総帥》は黒に向かう理由として充分すぎるほど強いカードではありませんか? あとは平均クラスのカードさえ取れてれば、《総帥》をプレイできれば勝ちでしょう。
- ズヴィ:
- いや、私は好いデッキを作りかけていたんだから、《総帥》を取るのはリスクが大きすぎた。デッキは回りづらくなるし、充分な枚数のカードが取れないかも知れない。もし黒がカットされたら、最終的には失敗だ。
――でも、トーメントは黒が濃いからなんとかなるでしょう?
- ズヴィ:
- それはあり得る、というか結構よくある……
――実際に黒いカードはあなたのところまでたくさん回ってきました。
- ズヴィ:
- 黒はたくさん来たね、予想していた以上に。ただ同時に、黒を取ることと《一時的狂気》は引き換えみたいなものだったんだ。《狂気》は凄いカードだし、もし赤を取ってなかったら、トーメントの最初のパックでは《戦闘的な修道士》を取る羽目になってただろう。実際には一周してきて9枚目に取ったカードをね。それに、《よろめく大群》と《ひどい憔悴》を同じパックから両方取ることはできない。これが来た時点でJensが青黒だって推測が間違ってたことが判ったんだが、これも《陰謀団の総帥》を回してればどうなったかわからない。Jensが完全に黒に向かい、このパックから《よろめく大群》を取っていたかも知れない。ひとたびトリプル・シンボルのカードを取ったら、もう一枚を取らない理由はないから。そうなればもっといいカードが私のところに回ってきて……と、雪だるま式に好い流れになっていたかも知れない。
私の戦略はこの雪だるま効果によっているんだ。どう動くべきか分かっていない相手をひとたび上手く誘導してしまえば、後々までそのまま動き続けてくれる。それと……このシャツがなければ、7手目に《盲信者》は取れないだろう? シャツも役に立ってるよ。
――この戦略は役に立たないだろうっておっしゃってる方もいましたよね。あなたの上家は、あなたがそう宣言しているからこそ白を全部カットしてしまうだろう、と。その意見には一理あると思われますか?
- ズヴィ:
- ヘイトされるからこの戦略は機能しないだろうなんて言ってる人は全員嘘つきだね。そんなことはあり得ない。Doughertyは「もし君の上家に座ったら、白をドラフトするよ」なんて言ってたから、私は「コール」って言ってやった。手持ちのチップを全部ずずずいっとテーブルの真中に押しやって。そんな言葉は信じない。単純に信じられない。そんなことをする人が居るとは考えられない。誰かを陥れるためだけに自分のプロツアーを台無しにするなんて、やらないよ。まして3−1のテーブルで。台無しになるのは間違いない。2パック目には何も取れないだろうから。私の上家で白をやろうとしたら、少なくとも普通より悪いポジションになるのは明らかだ。いずれにせよ私から遠い席にもう一人白が居るだろうことは間違いないし。こんなことのために自分のプロツアーを狼に喰わせるような真似をするかい? 隣に座ってる――ナイスガイに嫌がらせをするために?
――ランディ・ビューラーはこの戦略には柔軟性が欠けていて、ドラフトは運任せになってしまうだろうと言ってました。例えば、最初のパックでは《気力あふれる放浪者》が出ましたが、多くのプレイヤーはおそらく《病的な餓え》を取って《放浪者》を流すでしょう……
- ズヴィ:
- 悪意があって言うわけじゃないが、それは多くのプレイヤーとやらが明らかに間違ってるだけのことだ。《放浪者》はあのパックで最高のカードだ。例えが悪いよ。《放浪者》は確実にあのパックで最高のカードだよ。
――いいでしょう、じゃあもっと単純に、「柔軟性に欠ける」という主張は理屈が通ってると思いますか?
- ズヴィ:
- 自分の運命ってのは自分で作るものだと私は思ってる。つまり、逃げ道がなくなるにしろ、予想もしなかった事態に遭ってしまうにしろ、とるべき正しい道がわかったにしろ、結局は自分で状況を作ってるわけだ。この戦略では他にとるべき道があることははっきりしてる。だから、「ああ、この戦略にこだわって、間違った色のドラフトに突き進んだら負けることになるだろう」と答えるのが妥当かも知れない。だけど、間違ったシグナルを受けて間違った方向のドラフトに進んで負けるのも、全く同じことなんだ。違いはない。
――では、例えば、開けたパックから《踏み荒らし》が出て、あなたは……
- ズヴィ:
- (《踏み荒らし》を)流すよ。
――《降り注ぐ塊炭》と《踏み荒らし》でも……?
- ズヴィ:
- まあ、とにかく流すだろうね。もし流れてきたら、取らなければ死ぬぐらいの勢いで取るけど。それで、白をとにかくがっちり集める。赤白は上手く取れてれば好い組み合わせだし、今回は上手く取れてる感じだったんだ。《狂犬》が9手目に来たりとかね。(最初の方で)《くすぶり獣》や《投鎖獣》が流れてきたから、うん、これはシグナルって奴に違いない……とは思っていた。それで、《集中砲火》を取って、赤に行くことを決めた。それからも《炎の斉射》がただ拾いできたり……おっと、取るかどうかの話をしていたんだっけ。
――デッキの出来栄えはいかがですか?
- ズヴィ:
- これより良くできた可能性はあったね。2パック目でもっと赤を取れただろうから。だけど、これは好いデッキだよ。これは好いデッキだ。
――もしこの赤いカード(《蛮族の狂人》《大音響攻撃》《一時的狂気》)の代わりに、黒になだれ込んで、トーメントで《よろめく大群》なんかの黒いカードを取れていたら、もっと強いデッキになっていたと思いますか?
- ズヴィ:
- そうなってたら、平地10枚/沼8枚みたいなマナ・ベースでひどく苦労していたと思う。黒のトリプル・シンボルを4ターン目に出そうとしたりなんかで。カードの質は上がったかも知れないけど、マナ・ベースは最悪だ。今のデッキはおそらくマナ・ソースを11:6ぐらいにできるし、私はそれぐらいの比率が一番好きなんだ。このデッキは一貫性があるし、問題も見当たらない。正しいドラフトをしたと思う。赤に関しては後半もう少しだけ好いカードを取れたと思うが、それでも悪くない。最良の手は、おそらく《陰謀団の総帥》の代わりに《集中砲火》を取ることだっただろうけど。
――それにしても、あなたとScott Jonesは共に3−1ということで、明らかに戦略は成功でしたよね……?
- ズヴィ:
- いや、それは母集団が小さすぎる。仮に私たちが二人とも2−2や1−3だったとしても、戦略が必ずしも役に立たなかったとは言えない。二人とも3−1だったってことにも、大して意味はないんだ。大事なのは、3−1テーブルで7枚目に《秘教の盲信者》が取れたってことだ。どんなパックであろうとも、普通そんなことはあり得ない。もし5枚目や6枚目で《盲信者》を見かけたら、誰だってそこで白に切り替えるだろうが、そうはならなかった。もしこれが普通のドラフトだったら、この《盲信者》が3〜4手目辺りに取られて、やっかいなことになってただろう。私はこのシャツを着ていなくて、それでも開けたパックから《放浪者》が出て、白をやっていたとして……まあ、普通にやっていても白を取ってたんじゃないかとは思うんだ。《放浪者》が出て、しかも《熟練の薬剤師》が取れたとなればね。おそらく他の連中は《薬剤師》は取りそうにないし……
――でもあなたはシャツを着てました。
- ズヴィ:
- そう。もしこれがなければえらいことになってたよ。Jensは《盲信者》を取っただろうし、私は《陰謀団の総帥》を取ることになって、一色か、下手をすると二色かぶってたなんてことになって、ひどいデッキが出来てただろう。ひどいまで行かなくても、少なくとも平均以下だろうね。だけど今この手元にあるデッキは、そんな仮定から出てくるデッキよりはずっと好い。だから私は満足してるよ。
――では最後に成績予想を。
- ズヴィ:
- 2−1ぐらいじゃないかな。
当ページは、2ちゃんねるの卓上ゲーム板「MTG Sideboard Online 日本語版」スレッドに投稿された記事を、426(braingeyser-lj@infoseek.jp)がまとめたものです。