- 原文
- The Deck Clinic: Metagaming Desolation Angel
- 著者
- Alan Comer
- 訳者
- 高潮の翻訳者
- 投稿日
- 2002-06-27
- 更新
- 2003-06-29
前回のコラムで、筆者はこのデッキ・ドクター・シリーズで取り上げたデッキのどれかで合州国選手権に挑むと宣言した。最終的に選んだのは白青黒の《荒廃の天使》デッキだった。理由は三つ。ひとつめ、そして最大の理由はプレイしていて楽しいから。トーナメント・プレイはさんざんやってきたので、楽しめるデッキが欲しかった。それがデッキの選択としては最良でないとしても構わなかった。楽しめてる時にはプレイングも良くなる傾向にあることもわかっている。同じ理由で黒単デッキも大好きだ。ふたつめは、このデッキは「レアを追加しない」というしばりのもとで組み上げていたので、そのしばりがなかったらどうなるのか、筆者自身ちょっと知りたかった。最後に、天使デッキは黒単デッキより強いと思っている、というのが第三の理由。
さて、このデッキは取り上げた回の最後ではこうなっていた:
ある環境に合わせてデッキをチューンする時には、まずその環境を理解する必要がある。幸い、GPミルウォーキーとドイツ選手権がいいタイミングで行われ、今回のメタゲームがどうなるかについてのヒントを与えてくれた。加えて、ミートグラインダー(合州国選手権オープン予選)の後に最終調整をいくつか加える時間もとれた。GPミルウォーキーとドイツ選手権を分析し、ネットでのリポートを見て人々がその二つの大会の結果にどう反応しているかを調べた。その結果、メタゲームは三つの主要なデッキタイプで成り立っていると考えられた。「サイカトグ」「トレンチ」「青緑対立」だ。ドイツで2位に喰い込んだ「《罠の橋》−《生体融合帽》」タイプも可能性はあった。また、チーム・ゴジラの残りのメンバーが研究している青緑のテンポ・デッキも要注意だったが、この情報に関しては考慮しないことに決めた。仲間うちをメタっても仕方がないからだ。さらに調べていくと、「サイカトグ」デッキは《行き詰まり》を《綿密な分析》に入れ替えつつあるらしいことが判った。《綿密な分析》は対戦相手にも打てるので、《罠の橋》に対する解答にもなっている。この情報を得て、考慮すべきデッキを最初に挙げた3つに絞ることにした。
さて、メタゲームを把握したので、今度は自分のデッキをそのメタに合わせていかなければならない。とはいえ分析は簡単で、メタゲームは天使デッキの元記事の頃から劇的に変化したにもかかわらず、分析結果は驚くようなものでもなかった。トークン製造機を持つデッキ(《ゴブリンの塹壕》と《リスの巣》)は《チェイナーの布告》と《無垢の血》に対して大きな問題だった。「対立」と「トレンチ」の両方に相性が悪いというのは相当ひどい。「サイカトグ」とは、カードドロー合戦の様相を呈する。最初は「サイカトグ」には《行き詰まり》と《嘘か真か》が入っていた。《行き詰まり》はこのデッキにとって悪夢そのものだった。マナ・ベースを築くために《ダイヤモンド》は不可欠なのに、それを置くだけで《行き詰まり》を割ってしまう羽目になる。こうなるとゲームは決まったも同然で、相手は先に引いたカウンターでこっちのドロースペルを打ち消してきて、さらにドロースペルでカードをもっと引く。ともあれ、メタゲームの変遷は《行き詰まり》を《綿密な分析》に入れ替えて、この悪夢を取り除いてくれた。もちろん《綿密な分析》も厄介なカードだが、《行き詰まり》とは比べものにならないほどましだ。それでもなお、相性が悪い顔合わせで、解答が必要なことには違いはなかった。
具体的な調整に入るにあたって、まずはレアを追加してはいけないというルールを忘れるところから始めた。このルールのおかげでかえって面白いデッキが作れたと思うし、オリジナルのデッキの持ち主にも組んでもらえるデッキになっていたが、筆者自身はレアを手に入れるのに困難はないわけで、この制限はなくしても構わなかった。ということで、マナ・ベースをもう少し改善することができるようになる。元のデッキは《神の怒り》――あるいは他に入れようと考えている白い呪文――を打つために必要な白マナを充分供給できるとは言いがたかった。選手権のためには、白い呪文を打てることが信頼できるマナ・ベースが必要だ。それで、何枚かの基本地形を《コイロスの洞窟》と入れ替えた。コントロール対コントロールの対戦では、デッキに入っている土地の枚数の多さが勝負を決める重要な要素のひとつになる。打ち消し呪文を持つ相手に対しては、脅威となる呪文を唱えるだけでなく、その呪文を打ち消し呪文でバックアップする必要があるからだ。多くの対戦が予想される三つのデッキタイプはいずれもコントロール寄りなので、土地は1枚増やすことにした。最後にほどこしたマナ・ソースの調整は、4枚目の《沿岸の塔》を投入したこと。このデッキは絶対にコントロールよりはアグレッシヴなクリーチャー・デッキの方が苦手な筈だから、白マナを得ることを重要視した。《洞窟》と《塔》は実際デッキの色マナ生成を補強してくれて、必要なタイミングに必要な呪文を打つことを支えてくれた――選手権の前日までは。
レアがらみのもうひとつの変更点は、元記事でも触れていたことで、《解体の一撃》を《名誉回復》に入れ替えるというもの。こうすると「対立」に対しては多少弱くなってしまうが、「サイカトグ」に対しては断然この方が強くなる。「対立」に対してもなお、正しい状況で打てば充分な力を発揮する。
次に、《無垢の血》を全部抜いた。クリーチャー・デッキに対する解答が必要なことには変わりがなかったので、《神の怒り》は4枚に増やした。新しいマナベースでさえ《神の怒り》を確実に打てる信頼性には欠けるし、《無垢の血》を失うことで序盤のクリーチャー防御はさらに弱くなるが、それでもクリーチャー・デッキに対する唯一の解答は大量除去しかありえないように思えた。実際、初期のプレイテストで赤緑と対戦した時には、早めの《神の怒り》一発でそのまま勝ちに持っていったことがとても多かった。
主要な三つのデッキと対戦する時には、ほぼ必ずサイド・インするカードがあった。あんまりサイド・インが多かったので、ついにはそれをメインから投入することにした。そう、《仕組まれた疫病》だ。メインに2枚の《疫病》は、「トレンチ」と「対立」の両方に対して有効に働く。これこそ望んでいたトークン生成カードに対する解答だ。おかげで、その二つのデッキに対しては五分五分まで持ち込める。《疫病》は「サイカトグ」に対しても悪くないが、五分までは届かない。《夜景学院の使い魔》を封じ、素の《サイカトグ》1/2パンチを延々もらって負ける、というパターンを消してくれるが、終いにはやられてしまうことが多かった。
ちょっとの間、《消えないこだま》と《破裂の王笏》を試してみたこともあった。最初はよさそうに見えたが、プレイテストを続けるうちにあまり役に立たないことがわかって、元に戻した。
最後に、元記事当時は白マナの供給が充分ではなかったために採用しなかったカードを加えることになった:《ジェラードの評決》だ。《強迫》が抜けて、《評決》が入る。ただし3枚だけ。筆者はデッキに入れるカードは全部4枚ずつ、というのが好みだが、単にスロットが足りなくて、これが一番弱いカードだと思えたというだけの話。テストプレイでは、このカードは非常に好い働きをしていた(後に選手権で正しい使い方が判ってからほどではなかったのだが)。事前には思いつかなかった働きで、「サイカトグ」に対してさえも五分に戦える力をもたらしてくれた:2枚の《評決》を自分に対して打ち、9点以上のライフを得るのだ。そうすると、激動→即《サイカトグ》で死ぬことがなくなる。もっとも、そんなに頻繁に起きることは期待できない使い方ではある。
サイドボードに取りかかろうという時、筆者はもっともよくあるミスを犯していた。「それまでに時間をかけすぎていた」のだ。サイドボードの大部分は刷新することにした。《殺戮》4枚と《十二足獣》2枚だけがそのまま残す部分。メインデッキから抜けた《強迫》4枚のうち3枚をサイドに置き、4枚目の《ジェラードの評決》を加えて10枚。「対立」対策として《解体の一撃》を2枚とる。《オーラの旋風》という選択もあったが、《罠の橋》デッキと当たる可能性を考えて《解体の一撃》にした。《破裂の王笏》はテストプレイでも殆ど役に立っていなかったが、このカードのアイデアを捨て切れなかった。これは明らかに間違った選択で、一度もサイド・インしなかった。もうひとつの誤りが《現実の修正》2枚。1枚は確かにありだったが、2枚目を入れることはなかった。結果論だが、《破裂の王笏》と2枚目の《現実の修正》のスロットには《枯渇》を入れるべきだった。
ここまでの変更を施して、戦える態勢は整った。素晴らしいデッキとは言えないが、充分プレイに値するデッキだ。筆者のランク付けでは一線級からは1ランク落ちるが、4−2は期待できるデッキだった。しかし、結果は芳しくなかった。マナ・ベースの色マナ供給力に対して呪文の色拘束がきつすぎるので、何ゲームかはそれで落とすことになるだろうとは思っていた。だが皮肉にも、この日に関してはそうはならなかった。どんなに白マナ2点を出すことが苦手なデッキでも、どんなに3マナ以上出すことが得意なデッキであっても、たった3マナに届くことが大問題になってしまう日はあるものだ。このデッキにとってはそれが選手権の日だったらしい。筆者が色事故で落としたのは1ゲームか、せいぜい2ゲーム。一方で3マナに届かずに負けたのは7ゲームにのぼった。誰にだってこれは避けられないことだが、このデッキを披露する日にそれが起きてしまったことは残念でならない。
最後に、このデッキで「サイカトグ」と戦う時のコツを書いておこう:この対戦では、大抵お互いにカードをたくさん引くことになりがちで、《ジェラードの評決》はいささか力弱く感じられることだろう。相手の手札を叩き落しても、すぐに補充されてしまうからだ。ところが、選手権で戦っている間にこのカードの正しい打ち方がわかった。序盤はじっと手札に留めておく。対戦相手はまずカードをどんどん引いてくるだろう。そして、不要なカードをどんどん捨てる。それでもじっと座って見ていると、大抵はさらにカードを引いて、手札から要らないカードを捨ててくる。そうなったら相手の動きに注意して、引き増しカードが尽きて動きが鈍くなる瞬間を見極めるのだ。それからやおら《評決》を打てば、必ずきつい一撃を決められる。この戦略にはプラスの副作用ももうひとつある。待っている間に《天使》の片割れや《ヨーグモスの行動計画》を引いてくると、それを《評決》の力を借りて通すことができるという点だ。いずれにせよ、引き増し呪文が尽きて動きが鈍った瞬間を見逃してはいけない。
選手権バージョン(サイドボード修正済)のデッキリストをつけておく。